2016北アルプス縦走・その5。

北アルプス縦走の最後。

2016年8月14日 AM10:30。
高天原から雲ノ平に戻って来て、山荘で昼食とビールを堪能しようと食堂へ。
ふと、TVに表示されている天気予報を見ると・・・・・、

翌15日は曇りのち雨・翌々16日も曇り。

前日まで一切雨マークは出ていませんでしたが、予報が急に変わりました。
これはのんきにビールなんて呑んでる場合ではないと、急ぎテント場へ戻ります。

戻りながら、今後の行動をシュミレーション。
翌日が曇りのち雨となれば、朝の内なら最後の薬師岳に行けるかも。

ならば、今すぐ撤収して薬師沢経由で太郎平小屋か薬師山荘へ泊まるか、
予定通り薬師峠のテント場へ行くか?
いや、コースタイムで6時間半以上掛かるので、到着はPM6:00を過ぎる。
そんな時間に混雑する薬師峠のテント場に空きは無いだろうし、
太郎平小屋や薬師岳山荘にチェックインするのは非常識過ぎる。

では途中の薬師沢小屋まではどうか?
時間的には可能だが、小屋泊だと翌朝に一人夜明け前から出発するのは難しい。
雲ノ平を早朝に出るのと変わらず、小屋泊のメリットは無い。

どう足掻いても、この日のうちに雲ノ平を出発するのはもう遅過ぎました。
こんな事なら高天原へはテントを撤収して行き、途中で荷物をデポし、
温泉に入って荷物を回収して直接薬師沢に向かえば、薬師峠には届いたかも。
ただ前日の天気予報ではそんな情報は無かったので、今更仕方が無い。

ともかく残る手は、翌日出来るだけ早く雲ノ平を出発し、太郎平へ行く事。
実は雲ノ平山荘で表示されている天気予報は、長野県大町の物。
あくまで平地の、しかも結構遠い所の予報なので、正確ではありません。
今回出発前に有料の山の天気予報に登録しており、
毎日メールで予報が送られてくる事になっています。
ですが雲ノ平は携帯圏外の為、その詳しい予報が届いていません。
太郎平なら携帯の電波が入るのを確認しているので、まずはそこに行く事。
そこで予報を確認し、テント場・山荘を利用してその日の内に薬師岳へ登るか、
天気の回復を待って翌朝登るか、もしくは素直にそのまま下山するか。
その選択を太郎平でする事になります。



本当は今すぐにでも動きたいのに、不可能なので悶々としながらも散策。





徐々に曇って来ましたが、
向こうに見える薬師岳へは行く事が出来るのでしょうか?



早めにテント場に戻り、夕食を食べ、荷物を整理して就寝。


2016年8月15日 AM2:30起床。
朝食を食べ、静かにテントを撤収し、AM3:20出発。



まずは画像のピンクのルートで、薬師沢~太郎平を目指します。
一段低いテント場を登ると、辺りは真っ暗。
曇っていて星も見えないので、北アルプス最深部で完全ブラックアウトです。
前日の晩に少し雨が降ったので、木道も濡れていて危険。



ヘッドライトを点け、慎重に歩きます。
普通こんな時間に歩いちゃダメです。
前日の散策の時に、この先の木道の危険箇所をチェックしてあるので、
思い出しながら慎重に進みます。
木道の端あたりで明るくなる想定でしたが、曇っているので真っ暗なまま。
仕方ないのでストックを収納し、両手両足・お尻を着きながら、
雨とコケで滑る岩の急坂を下って行きます。





同じ位の時間に雲ノ平を出発した若い方と、前後を入れ替えながら下ります。
ようやく明るくなって来ました。



AM5:55 薬師沢小屋に到着。
こんな時間に雲ノ平から下りて来たもんだから、結構変な目で見られました。
ここでも携帯は圏外なので、行動食を少し食べたらすぐ出発。



薬師沢から少し登ると、その先はほぼ平坦な木道が続きます。
これが結構厄介で、朝露で滑って何度も転びました。



この先、渡渉箇所が3つあるので、大雨だと渡れなくなる心配があったのですが、
まだ増水も無く、太郎平までは行けそうです。
ですが無常にも雨が落ちて来ました。
暫く木道を歩き、急登を進み、もうすぐ太郎平と言う所で・・・、



雷鳥発見!


親子2羽のようで、夜明け前からピリピリしていた気持ちが、少し軽くなりました。



そしてAM8:00 ガスで真っ白な太郎平に到着。
切れた息を整える間もなく、すぐにスマホで天気予報をチェック。
その予報は・・・・、

薬師岳の天気:昼前から雷を伴う強雨、翌日も霧のち雨。

想像していたよりも、悪い予報でした。さすが山の上。
ですがこの予報だと、薬師峠にテントを張ってすぐに山頂に行くのは危険。
翌朝まで待っても、晴れ間は絶望的。

この時点で、一日早いですが、このまま下山する事に決めました。
さっき雷鳥を見た時に、「お疲れさま~。」と言いに来てくれたようで、
気持ちが軽くなり、悪天候の中、無理して行くかなくても良いかな?と思えました。

ここまでかなり急いで来たので、ちょっと一息。
小屋でホットコーヒーとアクエリアスを買い、まったり。



名残惜しいですが、下山して行きます。
またいつか。

さて、いざ下山するとなると、これはこれで問題が。
元々下山予定は翌日なので、帰りのバスも電車も当然翌日の予約をしています。
ですがバスは空きがあれば乗せてくれるようなので、それに賭けてみます。
そして富山駅行きのバスは正午とPM2:00。
折立までのコースタイムは3時間。
ギリギリ正午のバスに間に合いますが、
同じく悪天候で下山している人も多いでしょう。
そうなると、少しでも早い方がバスに乗れる確立は上がります。



雲ノ平から一緒の若い方と合流して、ハイスピードで下山。
暫く歩くと、結構な雨となりました。
これは薬師岳へ向かわなくて正解でしょう。
途中で木道で転んでストックを折るアクシデントもありましたが、
AM10:30 折立に無事下山。



コースタイム3時間の所を、雨の中2時間で降りるとは・・・。
おかげでバス待ちの列の先頭に並べました。



少し待つとバスがやって来て、
どうやら正午のバスは予約が半分しか埋まってなく、ちゃんと乗れるとの事。
これで一安心なので、汗で濡れたシャツを着替え、暫く待ってバスへ。
出発時には満席になっていたし、この後のバスは予約で一杯だそうで、
やっぱり急いで下山して正解でした。
富山駅までバスに揺られ、駅に着くと快晴の猛暑。
みどりの窓口で電車の予約を変更してもらい、
コンビニで甘い物とコーラを買って満喫。
暫く待って、北陸新幹線サンダーバードで帰宅。
その夜、朝まで北アルプスの最深部で寝ていたのに、
晩は大阪の自宅で寝ているのが不思議でした。

翌日はゆっくり体を休めながら片付け・洗濯をして、今回の山行は終了。


当初予定より一日短く、最後は悪天候となりましたが、
それまでは本当に快晴続きで素晴らしい景色が観られました。
天候が荒れた場合、外すなら登山口から一番近い薬師岳だと思っていたので、
最後は冷静な判断が出来たと思っています。

今回登れなかった薬師岳は、
折立スタートで薬師岳~五色ヶ原~立山のルートもあるので、
いつかそこも歩いてみたいと、また新たな構想が浮かんで来ました。

そして、今回も全く危険な目にも遭わず、無事下山出来たのが何よりです。