シングルシートカバー製作記・型編。
今までの疲れが出たんでしょう、今日は朝から体調が思わしくなく、
昼には激しい嘔吐・頭痛・下痢で酷い状態でした。
薬を飲んだ為、夕方にはなんとか回復できましたが。
さて、昨日の続きです。
出来上がったマスターから、型を取ります。
FRPの型は、FRPで作ります。
つまり、FRPの製品より分厚いものが、型になるわけです。
もちろん、製品とは違い、専用の材料が必要となるのですが。
すべてを一つのショップから購入していますが、簡単ではありませんでした。
なかなか、私が欲しい物全部を扱っている所がありません。
結局ラインナップには無い物を特別に仕入れてもらったりしました。
まずは、出来上がったマスターに、離型処理をしていきます。
これをしないでマスターにFRPを貼ったら、二度と取れなくなります。
左から、ケムリース・PVA離型剤・ブルーワックス。
それぞれに特徴・使い方・向き不向きがあります。
ケムリースは、型の表面に極薄い膜を形成し、それを何度も重ねる事で強力な離型性を発揮します。
製品を抜いた時に鏡面になるのが特徴です。
これは高価です。
PVA離型剤は、比較的使いやすく水で落とせます。
一度でしっかりした膜を形成します。使用も簡単。
ですが、製品は鏡面にはならず、ザラザラガタガタになります。
これは安価。
ブルーワックスは、一般的な車用ワックスに近い物です。
それらと同様に、型に塗っては拭き取る、を繰り返します。
一般的にFRP離型剤と言えば、ボンリースやミラーグレースが主流です。
ですが、私はあえてこのブルーワックスを指定しました。
理由は、私が以前FRP屋だった時に使っていたからで、特性も良く解っています。
その当時でもボンリース等は使いましたが、ブルーワックスに比べ離型性が一段落ちる印象でした。
その為、通常はブルーワックスを使い、型の離型性をあえて落としたい時に、
部分的に使っていました。
このブルーワックスはアメリカ製で、めったに売っていません。
かなり無理して仕入れてもらいました。
通常の車用ワックスと比べて、ずっと高価です。
では、これらで離型処理をしていきます。
まずは外側のパーツ。これは外装になるので鏡面でなくてはいけません。
当然使うのはケムリース。
このケムリースの使い方は、キッチンペーパーなどに少量含ませ、型全体に薄く延ばしていきます。
それを乾かないうちにすばやく拭き取ります。
これを何度も繰り返します。
ですが、問題もあります。
このケムリース、型の温度が25℃以上でないと、膜を形成しません。
作業は真冬だった為、温度がまったく足りません。
その為、マスターをヒーターで温めながらの作業になります。
塗っては拭き取り。説明書には5~6回とありますが、これでは足りません。
マスターの表面が「ニュルッ」となるまで、しつこく繰り返します。
膜が形成されたら、この上にブルーワックスを塗っていきます。
全体にしっかり塗り、一日置いて拭き取る。
これも何度も繰り返します。これで完成。
内側のパーツは、出来上がると表面は見えなくなるので、簡単なPVAで処理します。
これはマスターに薄く均一に塗って乾かすだけ。
このあたりの作業、クリスマス前後です。
マスターの離型処理が終わったら、いよいよ型を取ります。
通常のFRP製品用の材料ではなく、型専用の材料を使います。
型専用の物は、耐熱・耐傷・耐スチレンに優れています。
これを一般の材料で作ると、2~3個作ったら型が破損してしまいます。
これはビックリするくらい高価。
3液性の為、促進剤としてナフテン酸コバルト溶液を、
ここで、注意!
コバルトとMEKPOを直接混ぜると、爆発・爆発的な炎上が起きる可能性があります。
私も昔、2mほどの炎を上げたことがあります。
混ぜる際は、1種類ずつよく混ぜてからもう1種類を混ぜるようにしましょう。
マスターにたっぷり塗ったら、1日乾かせます。
これも同じくらい高価。
中間樹脂は、製品用の樹脂に含まれるスチレン成分を浸透させない性質があります。
高価だからとこれを使わないと、あっという間に型が破損します。
この2点で型の表面に4mm程の層を作っておきます。
これを1日乾燥させます。
この作業は、元旦の朝です。
次にこの上に、#450のガラスマットを耐熱イソフタル酸樹脂で張ります。
もちろん高価。
なぜ耐熱樹脂を使うかと言うと、FRP樹脂は硬化時に180℃近い高温になります。
その為、通常の樹脂を使うと、すぐに破損・変形してしまいます。
これをローラーで脱泡し、さらにもう1層マットを敷きます。
ローラーで脱泡後、FRP専用の鉄ちんローラーで極僅かな気泡も抜きます。
この際注意する点は、型の成型は極限まで樹脂を搾り取る事。
樹脂が多いと、硬化時に発熱し、変形してしまいます。
これを完全硬化させる為、4日置きます。
その後、型とマスターを分離させます。
一部、型とマスターがくっついていましたが、これ位なら修正可能です。
余分な部分をグラインダーでカットし、作業し易いように足を付けます。
いくら鏡面処理をしていても、ある程度表面はザラザラになります。
型の表面を耐水ペーパーで、#600~2000まで研ぎ、
これでようやく、型の完成。
長っ!!
次回、製品成型編に続く。